逸見政孝アナウンサー

六万石

2010年11月22日 01:43

逸見政孝アナウンサー
                                         特別機構 by私の難聴は、高音からだんだんに音が失われていくタイプのものでした。
「テレビ視聴」を例にとるならば、だいたい次の3段階に分けられます。

1.「聞こえていない」ということを自覚しないレベル。
  このレベルでは、ドラマのセリフやスポーツの実況放送など、ほとんど聞こえていると自覚している。
  実際には高音域が聞こえていないので、歌などは「音痴」と評価される。
2.補聴器・ループなどの補助器具を使って、部分的に聞こえてくる。
3.いかなる補助器具を用いても、(音は大きくなるが)言語としてとらえることができない。
  したがって、「消音」の状態で、テレビ番組を観ている。

さて、昭和40年代の後半から50年代の前半、私は上記の「2」のレベルだったと思います。
ドラマなどを見てもあまりよくわからない。当時は「字幕」というものが存在しなかった。
テレビといえば、もっぱらスポーツ番組、いちばんわかりやすいプロボクシングの中継であった。

輪島功一

日本ジュニアー・ミドル級チャンピオン・ワジマー・コーイチ・・・」

リングアナウンスの音声は耳に快くよく聞こえていた。

昭和50年代だったと記憶するが、韓国の「柳・済斗(リュウ・サイト)」との一戦が忘れられない。
輪島がリュウ選手と闘うのは2度目で、前回はリュウ選手に完膚なきまでに打たれて、輪島はチャンピオンベルトを失った。
今回はチャンピオンベルト奪還のためのリターンマッチ。

話はそれるが、いまどきのテレビで輪島功一とか具志堅用高とか、ガッツ石松とかが、おバカキャラを演じているが、彼らは本当は、ものすごく頭いいのである。おバカキャラを演ずるには、自分がどういう役割・演技を求められているのかを、瞬時に判断して演じなければならないわけで、すごく頭の切れが必要。スザンヌさんだって同じだろう。

輪島といえば「蛙とび」、すなわち、相手のパンチをしゃがみ込む様なダッキングでかわすわけだが、 その体勢から、蛙がジャンプするように跳びあがり、左右のフックを振るう。

14ラウンドを終えた時点で、解説の矢尾板さんの採点でも、ポイントは明らかに輪島がリードしていた。
したがって、最終ラウンドでは、輪島は距離をとってアウトボクシングをしてさえいれば、チャンピオンベルト奪還は確実と思われた。

ところが、最終ラウンド、輪島は足を止めて打ち合いに出た。
「これはあぶないですね。リュウは一発を持っています」
と、矢尾板さん。

リュウ選手のパンチには一発・一発に重みがある。

1発・2発とリュウ選手の体重をのせたパンチが輪島のボデーをとらえた。
「くの字」となってこらえる輪島選手。
あぶない!

このときである、実況中継をしていたアナウンサーが突然叫んだ。
「輪島逃げろ!輪島逃げろ!」
このアナウンサーの叫びは、難聴である私の耳にも確かに聞こえてきたぼど切迫した声であった。

しかし、輪島は逃げなかった。
スピードで勝っていた。
左ジャブを軽くあててから、右フック、もう一発右のフックがリュウ選手の顎をとらえた。
あとは連打、連打であった。

リュウ選手も、ただものではない。輪島の連打を浴びても辛うじて立っていた。
立ってはいたが、すでにスタミナが切れていた。
打たれるまま、後退していった。

レフェリーが止めに入って、両選手をニュートラルコーナーに戻した。
リュウ選手はロープにもたれかかり、天井を見上げながら、再びファイティングポーズをとることはなかった。

「輪島逃げろ!」
日本全国の誰の耳にも届いたあの絶叫。

逸見政孝アナウンサー

は、今はない。

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